「すべての人がありのままの自分と他人を尊重できる大学」を目指して Ocha Diversity インタビュー

 昨年の徽音祭前に、Twitter上で水コン実行委員会への要望書を公開し、現行の水コンに一石を投じたOcha Diversity。今回はOcha Diversityのメンバーである本田さん(グローバル文化学環・4年)と伊藤さん(グローバル文化学環・2年)に、「水コン」そして「これからのお茶大」についてお話を伺いました。



・水コンについて


_現行の水コンについてどう思われますか?

本田さん(以下本田):根本的に水コンを変えていく必要があると考えています。第一に、人の容姿や内面に順位をつけることは不適切だからです。個人が心の中で、どの人を「美しい」「かわいい」などと思うかは完全に自由ですが、多数決によって誰が「美しい」「かわいい」かを公に決めることは、女性の「美」や「振る舞い」のあり方を画一化してしまう危険性を孕んでいるからです。例えば、細くて二重で肌が白い人がグランプリやファイナリストになれば、そのような人が美しく、そうでないことは美しくないというメッセージを発信してしまう恐れがあります。さらに、水コンでは外部投票を実施しています。そのため男性も多く票を入れることが想定でき、「ジャッチする男性」と「ジャッチされる女性」というジェンダー非対称性を生み出していると言え、それは女性のエンパワーメントを掲げるお茶の水女子大学で行なわれるイベントとしてふさわしくありません。



_水コンも他の大学のミスコンと同じだと思いますか?

伊藤さん(以下伊藤):構造的な問題としては同じだと思っています。

本田:同感です。コンセプトを理解せずに、外見で人を判断して票を入れる人もいると考えられるため、「外見で人を判断している」と批判は免れないと思います。「ミスコン」という言葉は使用せずにあえて水コンということで、「ミス:独身女性」を評価することを免れていると考える実行委員の方もいるかと思いますが、一見お茶の水女子大学のミスコンの略称にも思えますし、他の大学のミスコンと大きく変わる点は見受けられません。また、実行委員会の方々は一定の基準でスポンサー企業を選定しているそうですが、他の大学にも協賛を出している脱毛企業をスポンサーとして迎え入れたり、多くの大学が使用しているミスコレサイトを使用している点など、他の大学との共通点が多いです。



_Ocha Diversityさんは「水コンを廃止すること」と「水コンを変えること」のどちらに主眼を置いて活動されているのですか?

本田:「廃止するのか」「変えるのか」というところに主眼を置いているわけではなく、あくまで要望書を通すことを最重要課題として掲げています。ミスコンはあくまで「ミス」、つまり独身の女性の中で順位付けをするものなので、人気投票制や異性愛規範をなくせば、そもそもミスコンではなくなります。それを「廃止」と呼ぶ人もいるでしょうし、「ミスコン的な要素がなくなったとしても水コンは水コンだ」と考えるにとっては、水コンが「変わった」と捉えられるのだと思います。そのため、公開要望書で掲げている6つの点を水コンの実行委員会が満たすことが何よりも重要で、その結果、現状の水コンが廃止されるのか、それとも変わるのかという解釈は人によって異なると考えています。



_上智大学のソフィアンズコンテストについてはどのように考えていらっしゃいますか?

 本田:第一に、「候補者の社会活動を評価している」とソフィアンズコンテストの実行委員会の方はおっしゃっていますが、候補者の顔や全身を写した写真をSNS等に上げてアピールしているため、容姿が評価基準になっていないとは言えないと思います。そのため、従来のミスコン/ミスターコンであっても出場されるような方々が出場しているという批判もされています。さらに問題なのは、グランプリは社会貢献活動をされている沢山の上智大学の学生の中のトップという印象を与えてしまうことです。社会貢献活動をすごく頑張っていたとしても、ソフィアンズコンテストに出場するには外見も重要視されているので「コンテストに出たくない」と思っている人は多くいると思います。にも関わらず、「グランプリ=大学で社会貢献活動を1番頑張っている人」と認識され、コンテストに出場していない他の学生まで巻き込んでしまっています。さらに言うと、社会に「社会貢献活動をしている人は美しい」というイメージを与え、そうではない人を活動の場から排除することにも繋がりかねません。



・これからのお茶大について


_今後、どのようなお茶大になっていって欲しいと考えていますか?

伊藤:ジェンダーインクルーシブなお茶大にしていきたいと考えています。お茶大の中にも、まだまだ多くのジェンダーに関連した問題があります。例えば、門で学生証の提示を要求される際、 「警備員の方に認められないと大学に入ることができない」という威圧感を感じることが多々あります。学生が「女の子」であることを警備員の方が判断できないと入構することができない、 またそういう風に思わされてしまうことによっても、自然と「女性らしさ」を押しつけられてしまっています。また、授業で使用されている、「女性」という概念がすごくざっくりとしたものになっていると感じます。女性と言っても、セクシュアルマイノリティの方だったり、障害者の方など色々な方がいるため、受ける差別は一様ではありません。女子大だからということもあると思うのですが、「女性」というと括りの中で私たち個人がまとめられてしまっているように感じてしまいます。


本田:私もジェンダーインクルーシブな大学をつくりたいと思っています。ジェンダー教育に力を入れている大学のはずなのに、依然として多くの問題があります。ミスコンと根本的なところを共有してしまっている水コンが開催されているだけでなく、学生たちの間でも学んだジェンダーに関する知識を実生活で生かし切れていません。トランスジェンダーの方の受け入れが今年度から始まり、制度や環境的な面では改善されてきてはいますが、学生の意識の面では不十分だと感じてい ます。構内に男性の見た目をした方が歩いていたときに、全員が差別的な視線を向けないかと言われるとまだそうではないと思います。差別的な視線や発言が当事者の方にどのような危害を与えるのか、自分たちの意識や行動をどのように変えるべきかというところも考えていくために、 Ocha Diversityとしても話し合いの場を提供していきたいです。



 本田さんはインタビューの中で、「法政大学のように学長によるトップダウンでミスコンを廃止するのではなく、Ocha Diversityはお茶大生を巻き込みながら一緒に要望書の中身を達成していきたい」とお話されていました。単にミスコンを廃止/変革するだけではなく、その先にある「ジェンダーインクルーシブなお茶大」をつくっていくためには、お茶大全体の意識を変えていくことが求められます。「すべての人がありのままの自分と他人を尊重できる」お茶大をつくっていくためには、お茶大生である私たちが改めて水コンや学内のジェンダー問題を議論していくことが必要なのではないでしょうか。


 3月10日(水)にOcha Diversityが開催するイベント「女性とは何か~お茶大『トランス女性の受け入れ』元年を記念して~」にもぜひご参加ください!




【Ocha Diversity】

ジェンダー社会科学専攻の大学院生の間で、特に水コンに対して強い問題意識を持っている学生たちが学内の「ジェンダー平等」の実現を目指してグループを創設。その後、2020年の7月から本格的に活動を開始した。現在は主に10人の学生(学部生・5人、院生・5人)で活動している。 

Twitter:@DiversityOcha

HPはこちら↓


公開要望書はこちら↓




(ライター:わさ)

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