目と課題の保養に読書のススメ


 日常の色々がオンラインに収束されてしまって、たまにはアナログにかえって読書をしようとしている人も多いのではないだろうか。そんな人に是非紹介させてほしいお話がある。あんまり長いのはそれはそれで気が滅入ってしまうけど、極端に短くなくて内容がずっしり詰まっている、そんな物語だからきっとちょうどいいと思う。それは、テッド・チャン作の「あなたの人生の物語」だ。この作品はタイトルの「あなたの人生の物語」のほか七篇、全八篇が収録されているSFの短編集だ。

今回は表題作について紹介しよう。



あなたの人生の物語」(原題「story of your life」)

もし、宇宙人が使用する、全く未知の言語を、人間が理解できたらどうなるのか?

突如地球に降り立った宇宙人の言語を解析し、使用できるようになるべく言語学者と物理学者が協力しながらプロジェクトを進めていく。

主人公である言語学者の女性の一人称で二層にわたる時間の中の物語が語られる。

二層にわたる時間のうち一つは時系列通りに沿うのではなく時折未来と過去を行き来していくので、少し自分がどこにいるのかわからなくなる不思議な浮遊感がある。最後まで読むとその浮遊感はどこにでもあっていい、のような安心感に変化するような気がする。


 ところで授業開始前に出された日本文学概説の退屈しのぎ課題はご存知だろうか。シラバスを見ると(1)~(3)まであるが、ここで取りあげたいのは(1)の川本真琴「ドーナッツのリング」では「ドーナッツ」はどういうことの比喩なのか。長くなってよいので、できるだけ的確な説明を考えよ。」だ。筆者がこの課題を提出した際に担当の先生からコメントと共に紹介されたのがこの物語だ。両者ともに「永遠」の比喩として大変優れているとおっしゃっていた。肝心の「ドーナッツのリング」の方はいまだに理解できていないのだが、「あなたの人生の物語」に関してはその通りだと感じた。始まりと終わりがどこにあるのかがわからなくなるのが永遠なのだろうか、と読了後に考えたものである。



 他にも、もし人間の容姿の美醜の判断がつかなくなったら、など読み物として大変面白い内容ばかりの作品が掲載されている。短編ばかりであるのでそう時間もとらないはずだ。興味があれば是非読んでほしい。


(ライター 作山)

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